
7月11日(金)に実施した宇宙大学でのご縁をきっかけに開催することとなった、宇宙大学初の課外授業!!
福井工業大学 あわら宇宙センターの村田教授にアンテナや通信の仕組みや展望、その魅力についてたっぷりお話を伺ってきました。

開催概要

【開催日】
2025年10月4日(土)
【ナビゲーター】
福井工業大学 あわら宇宙センター 副センター長 村田 泰宏先生
【レポーター(宇宙大学パートナー)】
宇宙大学アンバサダー カリン パウラさん
宇宙大学コミュニケーター 萩原 宙さん
【主催】
一般社団法人 宇宙産業機構
見学会レポート
あわら宇宙センター 衛星地上局の見学
芦原温泉駅から車で約10分、田園風景の広がるあわら市に突如として姿を現したのは、二つのパラボラアンテナ。

左が国内最大級で月-地球間の通信も可能な13.5mのもの、右が2000年から2015年まで稼働し、現在は修理中の10mのものです。
大学構内に入り、村田先生にご案内いただいたのはあわら宇宙センターの衛星地上局です。

それぞれの画面には何やら、数値や文字列、そしてばらばらと現れては消える無数の点たちが・・・。


そして、正面の窓からはアンテナが!!
思わずパウラ氏、記念撮影!!
浮つく心を抑え、まずは村田先生からあわら宇宙センターの概要についてご説明いただきました。

福井工業大学は、2000年から10mアンテナを建設し、宇宙をつなげる地上のアンテナ設備を運用してきました。
2022年に3.9m、そして2024年には13.5mの大型アンテナをあわらキャンパス内に整備し、JAXA宇宙戦略基金「月-地球間通信システム開発・実証(FS)」にも採択されました。
13.5mのアンテナは、アルテミス1のSLSロケットで打ち上げられた超小型探査機エクレウスと通信することを目的に作られました。その通信性能はなんと、NASAの月面活動における地上局(LEGS:Lunar Exploration Ground Sites)の能力要求とほぼ同等!!
現在参画中のプロジェクトには、月面における位置情報取得のための測位衛星や月の水資源を探査するための衛星など月面開発に関するものがいくつも!!月面での生活に思いを馳せます。

月に着陸予定だった探査機エクレウスの模型を持つパウラ氏。
今度は、実際にアンテナが衛星の電波を受信する様子を見せていただくことに!
秒速約8kmで地球を回る衛星の電波を受信できる時間は一回の上空通過時にわずか15分程度。
その間に得られる受信データはどんなものだろうと心躍らせて画面を見ると・・・!

ついさっきまでばらばらと動いていた点の集まりが4つの箇所にピッタリと集まっていきました。

これはQPSK(四位相変調方式)という通信の仕方で、送りたい信号を波のズレによって4つのパターンで表現するというもの。点がきれいに集まっているとデータを受信しているということらしい。

目の前で方向を変えながら大きなパラボラアンテナが上空約400kmからの信号を受信していると思うと、ただの点だと思っていたものにも感動を覚えました。
もう一つ、同じように電波を受信している様子が映るスクリーン。しかし、点の集まり方に少しばらつきがあるような・・・?
「こちらは3.9mのアンテナが受信したものです。」と村田先生。
13.5mの性能のすごさを実感したところで、お待ちかねのアンテナ見学の時間となりました。
あわら宇宙センター パラボラアンテナ見学
あいにくの雨の中、安全用ヘルメットを身に着け、まずは3.9mのアンテナへ!

球状ドームの中は一体どうなっているのか、想像力を膨らませながら入口への階段を上ります。

いよいよアンテナとご対面!ドームの中に身をひそめながら宇宙からの信号をとらえ続けるアンテナに思わず笑みがこぼれます。
ここでひとつ、「ドームはそもそも何のため?」との質問に対し、村田先生が丁寧に教えてくださいました。

「ケーブルがむき出しになっているので、雨風を避けるためにドームをかぶせています。大型のアンテナの場合は、ケーブル類はカバーされていて、費用的に安いほうが選ばれています。」
宇宙開発では、如何に費用を抑えられるかが課題なのですね。


宇宙大学パートナーの二人と村田教授と3.9mアンテナの4人で記念撮影📸
次に向かうのはいよいよ国内最大級!13.5mのパラボラアンテナです。

柵の中に入って作業するためは何重ものセキュリティが施されています。作業中にアンテナが動いてしまったら大きな事故にもつながります。
大きなワクワクとドキドキを胸に、柵の中に入ります。

真下から眺めるアンテナは圧巻!
とても画面には収まり切りません。


アンテナの真下にある操作室にも特別に入れていただくことに!


操作室の中からもアンテナを動かしてもらい、アンテナの動きを全身に感じることができました。そして人工衛星からの信号も・・・少しだけ、感じることができた気がします。

最後はやはり記念撮影。
そしてやっぱりアンテナは画面からちょっとはみ出てしまいました。
約3時間の見学会は大盛況のうちに終わりました!
実際に見学できたことで、「福井といえば恐竜!」から、「福井といえばあわら宇宙センター!宇宙に近づける場所!」という認識に変わりました。
福井工業大学では、他にも毎年高校生向けの宇宙教育イベントを実施しています。
気になった方はぜひ以下の動画もご覧ください。

村田泰宏先生、本当にありがとうございました!!
【レポート作成】宇宙大学アンバサダー カリン パウラさん、宇宙大学コミュニケーター 萩原 宙さん
プロフィール
ナビゲーター

村田 泰宏(むらた やすひろ)氏
あわら宇宙センター 副センター長
あわら宇宙センターの実行部隊の1人
【プロフィール】
東京大学理学系研究科天文学専攻博士課程終了
学生時代は、国立天文台野辺山宇宙空間観測所で研究生活
文部科学省 宇宙科学研究所 助手
「はるか」(VSOP)プロジェクト
JAXA 宇宙科学研究所
ASTRO-Gプロジェクト(途中で中断)、美笹54m地上局建設プロジェクト
臼田宇宙空間観測所所長(2016-2023)
2024年3月でJAXAを退職し、
2024年4月より福井工業大学工学部電気電子情報工学科
2024年7月にあわら宇宙センターが設立され副センター長を拝命
宇宙大学パートナー

Călin Paula(カリン パウラ)氏
宇宙大学アンバサダー
【プロフィール】
【出身】ルーマニア、ブカレスト
【卒業】奈良女子大学 文学部 人文社会学科
【日本居住】 約9年(2016年~現在、ずっと関西です)
【趣味】星空観察、フィールサイクル、瞑想、宇宙大学のイベントに参加することなど
好きな言葉は“wonderlust”。遠くへ行きたい、見たことのない場所を見たいという願望を表すこの言葉には、世界をいろいろな角度から見て、より深く理解したいという人間らしい感情が込められていると思います。
日本が好きな理由は数えきれないほどありますが、そのなかでも一番好きなのは、まるでパズルのピースのような「日本語」です。幼い頃に見たペルセウス座流星群を見た感動をきっかけに、宇宙への関心が芽生えました。日本語を学び、日本での生活という夢を叶えた今、再び心は宇宙に向かっています。
この広い宇宙と人間のつながりを、少しでも深めることに貢献できたら嬉しいと思い、日々学び続けています。
instagram : Pau11c

萩原 宙(はぎはらそら)氏
宇宙大学コミュニケーター
【プロフィール】
【出身】鹿児島県
【学歴】九州大学理学府物理学専攻 修士号取得
【来歴】鹿児島→福岡→徳島→佐賀(現在)→?
【好きなもの】宇宙論、宇宙開発、ソフトロボット、脳科学、「The Big Bang Theory」、「バイリンガルニュース」、イラスト、粘土造形、etc
「『時間』に終わりと始まりがあるのか」というのが幼いころからの一番の問い。
映画「Back to the Future」をきっかけに、科学者を志す。
しかし現実に対する憧れの相対速度は想像以上に大きく、科学者になるという夢は僕の重力圏を離れて宇宙の彼方へ。
代わりに世間と科学者のギャップを埋めるべく、サイエンスコミュニケーターに。
すると不思議なことに、就職先で元・JAXAの方に出会い、宇宙への招待券を手渡される。
現在、宇宙のどこかを漂う夢を追って、終わりのない旅の途中。
座右の銘は『パニクるな』

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