
🚀大手建設会社が、なぜ宇宙の“雑菌汚染”を研究しているの?
実はこれ、月や火星での基地づくりにも関わる大切なテーマです。
鹿島建設の専門家が語る、宇宙探査と地球の環境技術の意外な接点とは‥‥?
こんな方におすすめ
✔️ 建設技術や環境管理が宇宙開発にどう活かされるのか知りたい人
✔️ 宇宙探査での微生物汚染防止に興味がある人
✔️ 「惑星保護」に関心がある人
講演者からのメッセージ

地球上の生命はどこから来たのか?
宇宙から飛来した可能性はあるのか?
〜いま、そんな研究が盛んに推進されており、日本の探査機 “はやぶさ2” が小惑星リュウグウから持ち帰った砂からも、アミノ酸、ビタミンB3、核酸塩基など多くの生体関連分子が発見されています。
こうした研究では、探査地の天体環境や採取したサンプルを「地球由来の生物(または生体関連分子)」で汚染しないことが重要で、惑星保護(Planetary Protection)という国際合意の下でミッションが推進されます。
これはいわゆる宇宙の環境保護ルールといえます。
他方で、人類が検討を進めている月や火星への移住は、基本的に惑星保護と対立する概念を多く含みます。
秩序ある宇宙開発とはどういうものか?
皆さんと一緒に考えてみたいと思います。
第140回 気づくセミナー 宇宙大学

■開催日:2025年11月7日(金)
■講演テーマ
宇宙の雑菌汚染を防げ!宇宙開発と微生物管理の少し意外な関係
■講演者
鹿島建設株式会社
エンジニアリング事業本部 次長 石川 秀氏
関西支店建築設計部 設計主査 名倉 真紀子氏
■進行
宇宙大学アンバサダー カリン パウラ氏
宇宙大学コミュニケーター 萩原 宙氏
■告知ページ
https://peatix.com/event/4609094
アーカイブ動画
▼こちらの動画は10分公開版です。
▼こちらは全編(宇宙ディスカッションは除く)です。
YouTubeのメンバーシップ登録で視聴いただけます。
🔽メンバーシップ登録はこちら
https://www.youtube.com/channel/UC5ZyoEmxURcH1ZhWbu-I9mA/join
⚠️iPhoneの方はアプリ経由だとAppleの手数料がかかるためWebブラウザからの登録がおすすめです
✔️課金設定をしているYouTubeアカウントでないと登録できないのでご注意ください。(Googleアカウントを複数お持ちの場合、ご確認の上、ログインしてください)
✔️登録はプライベートに行えます。コメントやチャットに表示されるバッジを避けたい場合は、コメントせずに視聴してください。
—————————————
iSIO会員の皆さまは、iSIO Discordから無料でアーカイブをご覧いただけます。
iSIO Discordに入られていない方は、メールまたはお問い合わせフォームからご連絡ください。
レポート記事
「宇宙と細菌」驚きの関係を探るセミナー開始
「生き物がいないはずの宇宙に細菌なんて関係あるの?」という素朴な疑問から、セミナーは始まりました 。講師は、鹿島建設株式会社の石川秀さんと名倉真紀子さんです。宇宙分野にも深く関わるお二人が、専門的な内容をとてもわかりやすく解説してくださいました。
月面に地球の環境を再現「ルナグラス」構想
まず名倉さんから、鹿島建設が提案する月面人工重力施設「ルナグラス」の紹介がありました 。高さ約400mの巨大な建物を回転させ、その遠心力で地球と同じ重力環境をつくり出すという構想です 。
内部には住宅、オフィス、海、公園などを備え、人が心身ともに健康に暮らせる環境をそのまま月に持ち込もうという壮大な計画です。京都大学との共同研究や万博での展示も進んでおり、SFのようでいて、実はかなり現実的なプロジェクトであることが伝わってきました。
宇宙探査を左右する微生物汚染のリスク
続いて、本編となる「宇宙探査と微生物の関係」について石川さんのお話が始まりました 。地球の微生物で汚染された探査機が他の星に着陸すると、サンプルが地球由来の菌で汚染され、生命の痕跡を正しく判断できなくなる可能性があります 。逆に、生命がいるかもしれない天体からサンプルを持ち帰る際には、地球の生態系を守らなければなりません 。
これらは「フォワードコンタミネーション(持ち出し汚染)」と「バックワードコンタミネーション(持ち帰り汚染)」と呼ばれ、国際条約やガイドラインによって厳しく管理されています 。
放射線や真空に耐える「タフな菌」の驚異
「でも、そもそも地球の菌って宇宙で生き残るの?」という誰もが気になるポイントについても、興味深い研究が紹介されました。
国際宇宙ステーション外部での実験や模擬火星環境試験では、放射線や真空にも負けないタフな菌が生き残ることが確認されています 。中でも放射線耐性菌デイノコッカスは、3年間宇宙空間で生存したとのことです 。石川さんの「いかにも生き残りそう」というコメントには笑ってしまいましたが、大変な生命力です 。
また、氷の下にもぐり込むと何百年も生き残る可能性がある菌もいるらしく、宇宙探査の難しさを改めて感じる話でした。
「超クリーンな宇宙船づくり」と日本の技術
こうした背景があるため、探査機の組み立てでは徹底した清浄度管理が求められます。火星探査機に許される微生物数の上限、クリーンルームでの組み立て、滅菌工程など、「超クリーンな宇宙船づくり」の裏側も紹介されました。
小惑星探査機「はやぶさ2」では、JAXA 相模原キャンパスのクリーンチャンバーで外界から完全に隔離しながらサンプルを開封・処理しており、日本の高い技術力に誇らしい気持ちになりました 。
人類移住と克服すべき微生物の壁
では、人類は宇宙に移住できるのでしょうか?
探査機だけなら「ほぼゼロ汚染」を目指せますが、人が生活を始めると状況は一変します。私たちの体には約100兆個の腸内細菌が存在し、生活排水、医療廃棄物、食料生産の排水にはどうしても微生物が含まれます。
ISSの生命維持装置や、魚と野菜を一緒に育てるアクアポニックスの仕組みなど、宇宙での生活インフラをどう整えるかは大きな課題です。最近、水族館でアクアポニックスの展示を見たのですが、まさか宇宙とつながるテーマだとは思わず驚きでした。
未知の宇宙開発におけるリスク管理の重要性
セミナーを聞きながら、映画『宇宙戦争』のワンシーンを思い出しました。人類を追い詰めたエイリアンが、最後は地球の微生物によって倒れるという展開です。
未知の宇宙には大きなロマンがありますが、同時にリスク管理も欠かせません。だからこそ、多様な分野の専門家がチームとなり、未来の宇宙開発を形づくっていくことに大きな意義があると改めて感じました。
執筆:中小企業診断士 永岡 伸一
講演者&司会者 プロフィール
講演者

石川 秀(いしかわ しゅう)氏
鹿島建設株式会社 エンジニアリング事業本部 次長
【プロフィール】
2001年に関西大学大学院を卒業し、翌2002年に博士(工学)を取得。
(株)海洋バイオテクノロジー研究所、鹿島建設の技術研究所を経て2016年4月より現職。
施設の衛生管理や感染対策の提案を行う傍ら、JAXA宇宙探査イノベーションハブ(2022年~2023年)に参加して “天体間の生物学的汚染防止技術” の研究に従事。
2023年からは京都大学・山敷教授が主催する宇宙居住研究会にオブザーバーとして参加しながら、“宇宙移住のための宇宙建築物” に関する研究を応援中。
本年8月には大阪・関西万博の宇宙移住をテーマにしたイベント(京都大学主催)でも講演。
専門は殺菌や微生物汚染対策など、微生物制御工学。

名倉 真紀子(なぐら まきこ)氏
鹿島建設株式会社 関西支店建築設計部 設計主査
【プロフィール】
2004年 名古屋大学 工学部 社会環境工学科 卒業
2006年 名古屋大学大学院 環境学研究科 都市環境学専攻 修士課程 修了
2006年 鹿島建設(株) 入社 建築設計本部 配属
2009年~現在 鹿島建設(株) 関西支店 建築設計部 勤務
司会進行

Călin Paula(カリン パウラ)氏
宇宙大学アンバサダー
【プロフィール】
【出身】ルーマニア、ブカレスト
【卒業】奈良女子大学 文学部 人文社会学科
【日本居住】 約9年(2016年~現在、ずっと関西です)
【趣味】星空観察、フィールサイクル、瞑想、宇宙大学のイベントに参加することなど
好きな言葉は“wonderlust”。遠くへ行きたい、見たことのない場所を見たいという願望を表すこの言葉には、世界をいろいろな角度から見て、より深く理解したいという人間らしい感情が込められていると思います。
日本が好きな理由は数えきれないほどありますが、そのなかでも一番好きなのは、まるでパズルのピースのような「日本語」です。幼い頃に見たペルセウス座流星群を見た感動をきっかけに、宇宙への関心が芽生えました。日本語を学び、日本での生活という夢を叶えた今、再び心は宇宙に向かっています。
この広い宇宙と人間のつながりを、少しでも深めることに貢献できたら嬉しいと思い、日々学び続けています。
instagram : Pau11c

萩原 宙(はぎはらそら)氏
宇宙大学コミュニケーター
【プロフィール】
【出身】鹿児島県
【学歴】九州大学理学府物理学専攻 修士号取得
【来歴】鹿児島→福岡→徳島→佐賀(現在)→?
【好きなもの】宇宙論、宇宙開発、ソフトロボット、脳科学、「The Big Bang Theory」、「バイリンガルニュース」、イラスト、粘土造形、etc
「『時間』に終わりと始まりがあるのか」というのが幼いころからの一番の問い。
映画「Back to the Future」をきっかけに、科学者を志す。
しかし現実に対する憧れの相対速度は想像以上に大きく、科学者になるという夢は僕の重力圏を離れて宇宙の彼方へ。
代わりに世間と科学者のギャップを埋めるべく、サイエンスコミュニケーターに。
すると不思議なことに、就職先で元・JAXAの方に出会い、宇宙への招待券を手渡される。
現在、宇宙のどこかを漂う夢を追って、終わりのない旅の途中。
座右の銘は『パニクるな』

コメントはこちらにどうぞ!