宇宙大学プレミアム講座 第1弾の講師、柳川 孝二氏は、H-Iロケットの第2段エンジン「LE-5」の開発や国際宇宙ステーションの運用、宇宙飛行士選抜試験の主導など、日本の宇宙開発に長年にわたり貢献されてきました。
柳川氏の活動は、日本の宇宙開発の歴史そのものといえるほど幅広く、深いものです。
本ページでは、柳川孝二氏のこれまでの功績をあらためてご紹介します。日本の宇宙開発を支え続けてきた柳川氏の歩みを、ぜひご覧ください。
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柳川 孝二氏 プロフィール
1951年 東京生まれ
1977年 早稲田大学物理学修士修了後、NASDA 宇宙開発事業団(現JAXA)入社
以降、ロケットエンジンLE-5開発、国際宇宙ステーションの利用/運用、シャトル利用宇宙実験を担当
1998年 米国ヒューストン駐在、国際宇宙ステーション開発、宇宙飛行士の訓練や搭乗調整を担当
2008年 JAXA宇宙飛行士選抜を、有人宇宙技術部長の時、企画/実施
現在の役職 公益財団法人 日本宇宙少年団(YAC)相談役、宇宙人文・社会科学研究会 代表理事、一般社団法人 宇宙産業機構 顧問、JAXA社友、Koshoya2020代表
【著書】
『なぜ、人は宇宙をめざすのか』(共著、誠文堂新光社)
『宇宙飛行士という仕事』(中央公論新社2352)
『宇宙飛行士に聞いてみた!』(日本語版監修、日本文芸社)
『Space Shuttle 写真集』(監修、玄光社)
『地球/月圏での人間社会の構築に向けた人文・社会科学研究』(編集:日本航空宇宙学会/分野横断・開拓部門/宇宙人文・社会科学研究会)
ロケットエンジンLE-5開発について
画像:JAXA
柳川孝二氏が手掛けたLE-5エンジンは、日本で初めて液体酸素と液体水素を推進剤とした実用ロケットエンジンで、日本のロケット技術発展の礎となった画期的なエンジンです。
LE-5はH-Iロケットの第2段エンジンとして開発され、軌道上での再着火機能を持っていることが大きな特徴です。この再着火機能により、衛星をより高い軌道へ送り届けることができ、日本のロケット技術の基礎を築きました。
その後、LE-5の技術はLE-5A、LE-5Bへと発展しました。
LE-5Aではエンジンサイクルの改良によって効率が向上し、LE-5Bでは構造の簡素化や材料の最適化によって信頼性とコストパフォーマンスがさらに高まりました。これらのエンジンはH-IIやH-IIA、さらには次世代の大型基幹ロケット「H3ロケット」などの上段エンジンとして使われ、改良を重ね現在も運用中です。
このように、LE-5の誕生により日本の液体ロケットエンジン技術は大きく進歩し、現在もその成果が活かされています。
主要諸元(代表値)
モデル | サイクル方式 | 推力 (真空) | 比推力 (Isp) | 重量 | 再着火回数 |
---|---|---|---|---|---|
LE-5 | ガスジェネレータ | 102.9 kN | 450秒 | 255kg | 2回 |
LE-5A | エキスパンダーブリード | 121.5 kN | 452秒 | 248kg | 2回 |
LE-5B | エキスパンダーブリード | 137.2 kN | 447秒 | 285kg | 3回 |
LE-5B-3 | エキスパンダーブリード | 144.9 kN | 448秒 | 290kg | 3回以上 |
参考:JAXA 主要諸元
日本人初のISS船長誕生をリード
画像:JAXA/NASA
国際宇宙ステーション(ISS)では、長らくアメリカやロシア出身の宇宙飛行士が船長(コマンダー)を務めるのが通例でした。しかし、日本の宇宙開発を支えてきた柳川 孝二氏は、日本人宇宙飛行士が船長となる道を切り開くために尽力しました。
その努力の結実として、2014年3月9日、若田 光一氏が日本人として初めてISS第39次長期滞在ミッションの船長に就任しました。これはアジア人として初の快挙であり、ISS運用史に新たな1ページを刻みました。
若田氏は、JAXA(宇宙航空研究開発機構)での豊富な経験と実績が評価され、アメリカとロシアの宇宙飛行士5人を含む6人のクルーをまとめるリーダーとして抜擢されました。
従来、ISSのコマンダーは軍人出身が多い中で、若田氏は民間航空会社の整備士出身という異色の経歴を持ち、ロボットアーム操作や数々の難しいミッションを成功させてきた実績が大きく評価されました。
若田氏は、国際協力の象徴であるISSで、「和」の精神をもって日本人ならではのリーダーシップを発揮することを宣言。
この歴史的な船長就任の背景には、柳川 孝二氏をはじめとする日本の宇宙開発関係者の長年の努力と、国際社会における日本の信頼と実績の積み重ねがありました。若田氏はその後も、世界15カ国の共同プロジェクトを円滑に進め、日本の存在感を大きく高めました。
参考:JAXAプレスリリース(若田宇宙飛行士のISS船長就任について)
日本の宇宙開発への貢献とこれから
画像:JAXA
柳川孝二氏のこれまでの歩みは、日本の宇宙開発の発展そのものということができます。数々のプロジェクトや国際協力の現場で培われた技術と経験は、確かな基盤となって次世代へと受け継がれています。
日本人宇宙飛行士の活躍や国際宇宙ステーション計画への貢献など、柳川氏が支えてきた歴史があったからこそ、今の日本の宇宙開発が世界に誇れる水準に到達したといえるでしょう。
これからも柳川氏の情熱と挑戦の精神が、未来の宇宙開発を力強く後押ししていくことを期待します。
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