
もし、宇宙で赤ちゃんを産むことになったとしたら?
宇宙に住む未来を考えるとき、
妊娠や出産は欠かせないテーマです。
私たちの身近な「いのちの誕生」は、
宇宙ではどんな挑戦になるのでしょうか?
「宇宙×出産」の第一人者であるえりか先生と、
いっしょに探ってみませんか?
こんな方におすすめ
✔️ 出産や子育てが、宇宙でどう変わるのか気になる方
✔️ 宇宙での暮らしや医療をやさしく学んでみたい方
✔️ 子どもや家族が安心して宇宙に行ける未来を考えたい方
講演者からのメッセージ

人類が宇宙に進出する未来において、妊娠や出産は避けて通れない課題です。
本講演では、宇宙環境が母体と胎児に与える影響、そして「周産期小児宇宙医学協会(PPSM)」の活動を通して進めている取り組みをご紹介します。
子ども達が安全に宇宙で活躍できる社会を、皆さまとともに考え、多職種とともに築く新しい「周産期小児宇宙医学」の入り口へご案内します。
第137回 気づくセミナー 宇宙大学

■開催日:2025年9月29日(月)
■講演テーマ:宇宙での妊娠と出産 周産期医療の新たなフロンティアー人類が宇宙で命をつなぐために
■講演者:中村 枝利香(なかむらえりか)氏
慶應義塾大学医学部 小児科学教室/ファミール産院きみつ所属
小児科専門医、宇宙航空医学認定医
周産期小児宇宙医学協会 代表
■司会進行:
宇宙大学アンバサダー カリン パウラ氏
宇宙大学コミュニケーター 萩原 宙(はぎはら そら)氏
■告知ページ:https://peatix.com/event/4574170
アーカイブ動画
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レポート記事
今回のセミナー講師は周産期小児宇宙医学協会代表で小児科医の中村枝利香先生です。
枝利香先生は、「子どもが安全に宇宙で活躍できる社会を創る」という想いを胸に、挑戦を続けています。
宇宙と医療をつなぐきっかけ
先生が宇宙に関心を抱くようになったのは、医学生時代の体験がきっかけでした。米国留学中に、関係者の宇宙飛行士のロケット打ち上げに偶然立ち会い、その瞬間を共に喜び合ったこと、ハンディキャップを抱えている子どもたちが「宇宙飛行士になりたい」と夢を語り、現場の小児科医が全力で応援していたことが心に残ったそうです。
宇宙医学の道へ進む転機となったのは、コロナ禍で社会が停滞する中でも商業宇宙飛行が活発化し、民間のスタートアップ企業が「宇宙出産」を目指すプロジェクトを立ち上げたことを知ったことでした。
その現実を前に、リスクマネジメントの必要性を強く感じたといいます。以後、NASA主催セミナーなどに参加し、「この領域を周産期医療の立場から考えなければならない」と決意するようになりました。
横浜クルーズ船での日本の衛生についての対応が世界的に評価され、宇宙という閉鎖空間にも適応できるのではという発想は驚きです。危機を課題ととらえ、未来に目を向ける人間の力強さを感じました。
宇宙で出産するということ
講義の中心は、スタートアップ企業が計画していた「宇宙での出産」をリアルに想定したリスクの洗い出し。ロケット打上げから帰還までを3つのフェーズに分け、母体・胎児に起こりうる問題を整理しました。
■打ち上げ〜軌道投入
高加速度や長時間の同一姿勢、放射線が母子に影響する可能性。
■分娩期
微小重力でいきみにくく分娩が長引く、体液が漂う環境で感染管理が難しい、緊急帝王切開や新生児蘇生の体制が整っていない。
■産後〜帰還
子宮の回復遅延や授乳困難、母子の愛着形成、産後うつのリスク。帰還時の衝撃や重力再適応も課題になる。
現状では安全な出産は難しいといわざるを得ませんが、課題を具体的に示し多職種で検討していくことが未来への一歩になると先生は語ります。
解決へのヒントも
一方で希望もあります。回転型居住施設(ルナグラス/マーズグラス)による人工重力の付与、体液回収デバイスや宇宙対応哺乳ボトルの開発、3Dプリンタによる医療機器の小型化など、工学と医療の連携で「できない」を減らす動きを進めることです。
宇宙で得た知見が地上の生殖医療技術など周産期医療の改善につながる可能性も大きいそうです。同時に、生命倫理や法制度の整備も不可欠で、「誰が責任を持つのか」「地上なら救えた命をどう扱うか」といった議論も始まっています。
未来をつくるのは今
周産期医療、工学、法、倫理――さまざまな分野が垣根を超えて協力し、子どもたちが宇宙で夢を描ける世界を目指す。自分のできることで宇宙を目指す子どもたちの未来を支えて行きたいと感じました。
執筆:中小企業診断士 永岡 伸一
アンケート結果まとめ
宇宙大学のセミナー後に実施したアンケートに、たくさんのご回答をいただきました。
参加者の皆さまの感想をもとに、全体の傾向や印象をまとめてご紹介。
全体傾向
・肯定的な意見が圧倒的に多く、満足度の高い講演だった。
・「宇宙での出産」という新しいテーマへの驚きと関心が多数。
・研究の継続や発展を願う声が多く寄せられた。
・難しい内容ながら「わかりやすかった」という評価が多い。
参加者の特徴
・専門職・研究者層:ECLSSなど過去の研究との関連に関心。国内での研究継続に安心感。
・学生・若手層:宇宙医学や医療機器開発への意欲的コメントが多く、学びの刺激が大きい。
・一般参加者層:初めて知るテーマとして興味を持ち、理解しやすかったとの感想。
内容面のポイント
・オランダのスタートアップによる宇宙出産計画に驚きの声。
・胎児発達と微小重力の関係に強い関心。
・現時点ではリスクが高いが、将来的な実現に期待する意見多数。
・女性の宇宙進出や倫理的視点を重視するコメントも見られた。
今後の示唆
・宇宙出産研究は科学・医学・倫理を横断する重要テーマ。
・国際的動向への関心が高く、情報発信の価値が大きい。
・若手育成・宇宙医学教育への波及効果が期待できる。
・継続的な講演や発信により社会的理解が広がる見込み。
講演者&司会者 プロフィール
講演者

中村 枝利香(なかむら えりか)氏
慶應義塾大学医学部 小児科学教室/ファミール産院きみつ所属
小児科専門医、宇宙航空医学認定医
周産期小児宇宙医学協会 代表
【プロフィール】
慶應義塾大学医学部小児科学教室、ファミール産院きみつ所属。
小児科専門医・宇宙航空医学認定医。
周産期小児宇宙医学協会(Perinatal Pediatric Space Medicine association, PPSM)代表として、「子どもが安全に宇宙で活躍できる社会を創る」ことを理念に活動している。
PPSMは、学生や医師、研究者、そして未来に宇宙を目指す子ども達と保護者を対象に、小児や周産期の宇宙医学に関する知識を広げ、子ども達が安心して宇宙を目指せる未来を支える組織である。
これまで成人を中心に進められてきた宇宙医学研究に、小児や周産期の視点を加えることの大切さを伝え、学会や教育を通じて多職種・国際的な連携を進めている。
日本宇宙航空環境医学会では若手研究者シンポジウムを企画し、「周産期小児宇宙医学」という新しい学問領域の確立に取り組んでいる。
宇宙での妊娠や出産を現実のものとするためには、さまざまなリスクを見据え、その課題に向けて専門領域を越えた協力が必要であり、世界の平和を揺るぎない前提として歩みを進めている。
司会進行

Călin Paula(カリン パウラ)氏
宇宙大学アンバサダー
【プロフィール】
【出身】ルーマニア、ブカレスト
【卒業】奈良女子大学 文学部 人文社会学科
【日本居住】 約9年(2016年~現在、ずっと関西です)
【趣味】星空観察、フィールサイクル、瞑想、宇宙大学のイベントに参加することなど
好きな言葉は“wonderlust”。遠くへ行きたい、見たことのない場所を見たいという願望を表すこの言葉には、世界をいろいろな角度から見て、より深く理解したいという人間らしい感情が込められていると思います。
日本が好きな理由は数えきれないほどありますが、そのなかでも一番好きなのは、まるでパズルのピースのような「日本語」です。幼い頃に見たペルセウス座流星群を見た感動をきっかけに、宇宙への関心が芽生えました。日本語を学び、日本での生活という夢を叶えた今、再び心は宇宙に向かっています。
この広い宇宙と人間のつながりを、少しでも深めることに貢献できたら嬉しいと思い、日々学び続けています。
instagram : Pau11c

萩原 宙(はぎはらそら)氏
宇宙大学コミュニケーター
【プロフィール】
【出身】鹿児島県
【学歴】九州大学理学府物理学専攻 修士号取得
【来歴】鹿児島→福岡→徳島→佐賀(現在)→?
【好きなもの】宇宙論、宇宙開発、ソフトロボット、脳科学、「The Big Bang Theory」、「バイリンガルニュース」、イラスト、粘土造形、etc
「『時間』に終わりと始まりがあるのか」というのが幼いころからの一番の問い。
映画「Back to the Future」をきっかけに、科学者を志す。
しかし現実に対する憧れの相対速度は想像以上に大きく、科学者になるという夢は僕の重力圏を離れて宇宙の彼方へ。
代わりに世間と科学者のギャップを埋めるべく、サイエンスコミュニケーターに。
すると不思議なことに、就職先で元・JAXAの方に出会い、宇宙への招待券を手渡される。
現在、宇宙のどこかを漂う夢を追って、終わりのない旅の途中。
座右の銘は『パニクるな』

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